シリーズ眼を養う#012
R+house 住宅のデザインを探る

(ページ:3/6)

43-10-11

私たち建築家の役割は人と人との関係性をどう紡いでいくかだと考える。住宅設計においては、家族間をはじめとして隣人あるいは客人など、その関係性は複雑でより私的なものとなる。

この住宅は新興住宅地に立つ建売モデルである。加盟店からは、若い主婦層をターゲットにした「かわいい」家がテーマとして与えられた。「かわいい」という曖昧な言葉を、わかりやすい形で表現しようとしたとき、柔らかな曲線を持つアーチが「かわいい」を表す記号となると考えた。

本来アーチは、組積造の壁に開口を開けるための構造技術であるが、開口部という性質上、領域と領域とを分ける境界という側面も持っている。今回はそのアーチを、人と人との関係性を紡ぐための鍵としている。テラスやポーチ、廊下に設けられたアーチは、内外あるいは部屋と部屋につくられる曖昧な境界となり、多様な関係性を調整し、つないでくれると考えている。

アーチという記号が、生活のあらゆるシーンで浮かび上がり、住まう人に「かわいい」と感じてもらえ、アーチという境界が、人と人との関係性を紡いでいく住宅を目指した。

page: p1 p2 p3 p4 p5 p6

ページトップに戻る