中古住宅・リフォーム政策の動向と消費者アンケートからみたリフォーム事業のあり方~長期優良認定住宅の建設費補助へ概算要求の8割を充当~

(ページ:2/2)

これは10 年というスパンの話であり、遠い先のことのように聞こえるかもしれません。しかし、目標達成に向けた動きは、既に具体的な形で始まっています。

国土交通省は、平成26年度の予算概算要求において、「中古住宅流通・リフォーム促進等の住宅市場活性化」予算として80 億円を要求しています。このうち、これまでは新築住宅のみが対象だった長期優良認定住宅の建設費補助を中古住宅のリフォームにも拡大し、その予算の80% を占める約64 億円を計上しています。

具体的には、木造の戸建住宅の場合、

①外壁・床下・土台・基礎に対する劣化対策の実施

②軸組みや耐力壁等を補強する耐震改修

③外壁・屋根・基礎の断熱性を高める省エネ改修

④ 配管の構造等を見直すことによる維持管理・更新の容易性などの必要に応じた改修

に相当するケースで、1戸あたり100万円を上限に、改修費の3分の1を補助する内容です。

これ以外に、現場検査チェックシートによるインスペション(住宅検査)の実施とリフォーム工事履歴の保存、維持保全計画の作成が補助の条件として設けられています。

その他にも関連する政策として、建物評価手法の見直しやリフォーム関係の新しい金融商品の開発などが掲げられています。

木造戸建住宅であれば約20 年で無価値になってしまう建物評価については、

①建物用途に応じた価格形成要因の明確化

②原価法による既存建物評価の精緻化

③既存建物の更新などに対応できる柔軟な評価

を柱とした新たな評価手法を検討することになっています。

またリフォームに係る新商品については、不動産業界と金融機関を主な構成員とする「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」を設置し、リフォームローンや、自宅を担保に老後資金を借りるリバースモーゲージなどの金融商品開発が進められています。

こういった事柄からも、長年に亘る新築住宅を主とした政策から、中古住宅流通市場活性化に向けた政策へと、大きく舵が切られ始めたことがご理解いただけるでしょう。

消費者アンケートから見るリフォーム事業のあり方

次に、住宅消費者の視点からリフォーム事業について考えてみたいと思います。

目的別のリフォーム・リニューアル工事件数(2012年度)

国土交通省が発表している「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」の2012 年度版(受注実績ベース)によると、目的別工事受注件数(図表4)は、上位から以下のような順になっています。

①劣化や壊れた部位の更新・修繕(67.9%)

②省エネルギー対策(8.1%)

③高齢者・身体障害者対応(6.4%)

省エネ住宅転居後の有病割合の改善効果

特に昨今では、②と③に関連する研究として、高断熱住宅への転居が健康に与える影響について研究が進んでいます。住宅入居者(特に高齢者の方)が高断熱住宅に住むことで、有病割合が減少するというデータは、今後のリフォーム(特に断熱改修)推進に重要なヒントを与えてくれるでしょう。

余談ですが、当社が展開するR+house ネットワークでは、今年の1 月から住宅性能がもたらす健康への便益について、実際の住宅消費者を対象とした健康データの取得を開始しました。次世代省エネルギー基準(平成11 年基準)を大幅に上回る性能の住宅における実証研究になりますので、この結果の詳細はまた別の機会に紹介したいと思います。

高齢者の住宅・リフォームに対する考え方についても紹介しておきたいと思います。図表6 は、内閣府が調査した「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果(平成22 年度)」からのものです。

① 現在の住居に、特に改造などせずそのまま住み続けたい(37.1%)

②現地の住宅を改造し住みやすくする(26.7%)

③ 介護を受け入れられる特別養護老人ホームなどの施設に入居する(19.0%)

この結果から、高齢者の方々が、新しく利便性の高い住居に転居するよりも、これまで住み続けてきた住宅・周辺環境・コミュニティーといったものに愛着を感じ、大事にしたいと考えている様子が伺えます。

周辺環境をコミュニケーションは重要

まとめ

以上、国の政策と消費者アンケート、2 つの側面から中古住宅・リフォーム市場について、私どもとしての見解をご紹介させていただきました。大きな流れとして、新築から中古・リフォームにシフトしてきていることはご理解いただけたものと存じます。

現在、リフォームといえば大多数が営繕をイメージされるかもしれませんが、今後は時代の後押しを受けて、省エネ(高性能)と高齢者対応がクローズアップされてくることでしょう。その時に、時代の流れに取り残されないためには、住宅会社として技術力を身に付けること、そしてそれを提案する営業力を磨く取組みが欠かせません。

重要な転換期に差し掛かっている今、情報のアンテナを張りめぐらせ、来るべき時に備えておくことをお勧めします。(鵜飼)

↓R+houseのサービスページはこちら↓
R+houseサービスページへ
↓ハウスINハウスのサービスページはこちら↓
ハウスINハウスサービスページへ

page: p1 p2

ページトップに戻る