イギリス、ドイツ住宅不動産視察の報告

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ドイツにおける持続可能な林業

フライブルクの北東約20kmにシュヴァルツヴァルト(黒い森)と呼ばれる総面積約5,180k㎡の森林地帯が広がっています。今回ドイツを訪問した際に、現地で行われている持続可能な林業の考え方(学問)が、日本の林業再生の参考になると感じました。

森の所有者は個人所有が30%、市の所有が30%、州の所有が40%と混在しており、元々はブナ・タモの原生林でしたが、現在は計画的に植林されたトウヒの木が多数を占め、密集して生えるトウヒの木によって、黒く見えることがその由来です。

林業には2種類あり、アメリカ型の林業は分離型の林業と呼ばれ、経済林と自然公園に分かれ、経済林は経済性(収穫量)を重視した生産がとられ、自然公園は社会性を意識した育成を行っています。一方、ドイツ型の林業は統合型の林業と呼ばれ、全部の森林を生産林と自然林として扱います。自然に近い形で利用できることがポイントで、育成状況に応じて活用方法を検討できるそうです。ドイツの統合型の林業は、森林育成のマネジメントシステムと言い換えることができ、単位面積当たりの育成量と伐採量を管理しながら、森林の育成と資源化の両立を果たします。つまり、森林の育成量を金利と置き換えて経済性をマネジメントしているのです。

森林の管理は、フォレスターと呼ばれる役人が行います。元々はシカやイノシシの狩猟官でしたが、現在は森林の育成・管理のエキスパートとしての地位を確立しています。

現在、森林の育成方針として生態系・多様性を重視し、枯木や害虫を駆除するのではなく、共存しているとのことです。管理を始めた当時はキツツキが森から姿を消して、森の成長力が落ちてしまいました。その理由をひも解いていくと、枯木を伐採したことが原因でキツツキの食物となる虫が森からいなくなり、森林に必要な益虫や害虫が失われ生態系を維持することができなかったからでした。

次に経済性という観点では、木材を効率的に輸送すべく、林道の整備に際して、自治体が80%の補助金を出して所有者の了解を得ながら計画的に行い、30tトラックが通行可能で水はけのよい路盤で整備しています。これにより渡場を道路沿いに作ることができるようになり、輸送コストを大幅に減らすことができたそうです。(ジャーナリスト池田憲昭氏の案内による)

このように、ドイツには林業を学問として捉え、環境性と経済性と社会性を実現するノウハウとして体系化されています。日本でもフォレスターの指導のもと、同様の取り組みが何か所かで始まっているそうです。日本には気候風土的特徴(成長スピード:雨量・太陽光)、木の種類が多いなど)があり、特有のメリットも享受できますので、日本版持続可能な林業を実現することで、日本国内の需要をカバーするだけでなく、将来的には海外への輸出も可能になる産業として大いに期待が持てると感じました。(鵜飼)

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