CMS(コスト・マネジメント・システム)活用による 収益性改善事例
〜原価管理レベルを高め粗利率改善!経営力向上ツールのご紹介〜

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「出来ている」を可視化する重要性

工務店A社は地域密着工務店として、ここ数年年間10棟程度を着実にお引き渡ししています。粗利率は25%程度出ているという認識をお持ちの一方で、自社の原価が適正であるかという疑問を持っていました。また2017年消費税10%に向けた駆け込みとその後の冷え込み、2020年省エネ義務化、世帯数の減少と市場が大きく変化していく中、今までのような原価管理精度・工務体質で勝ち残っていけるのか漠然とした不安を持っていました。そこで、比較的市場環境がいい今のタイミングで自社の原価管理精度・工務体質を見直すということでCMS(コスト・マネジメント・システム 以下CMS)を導入されました。

CMSではご導入後の第1回目の研修前に自社のこれまでの施工物件を案件毎・工種毎に営業段階の見積り原価、実行予算、工事原価を入力し、原価構造の現状を「見える化」することから始めていただきます。A社でも早速取り組んでいただきました。その結果が図表1です。

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入力をしてみてまず浮かび上がったのは、全棟平均の最終粗利は感覚値と近い25%程度を確保出来ていましたが、物件ごとにみると、契約時(見積)、実行予算・工事原価の乖離(かいり)があること、そして物件ごとにその乖離の程度が違うということでした。出来ていると思っていたのは1年を通しての結果であり、物件ごとには課題があるという気付きをえることが出来ました。

原価管理の正しい手順とは

物件ごとに契約時(見積)、実行予算・工事原価の乖離があること、しかも物件ごとにその乖離の程度がちがうという背景には何があるのか…A社ではそれを深堀することこそ正しい原価管理の第一歩と考え、さっそく分析を開始されました。従来、A社では各業者から提出される見積を元に実行予算を作成、着工2-3日前に予算が確定されていました。しかし、提出された見積もりを元に原価が適正か検証することは難しく、また一部の業者からは「一式」で見積もりが提出されており、適正な原価であるかの判断は難しい状態でした。

誌面では詳細な数値はありませんが、CMS導入後、自社の過去物件の原価検証と工事・工種ごとに分析した結果、契約時見積もり・実行予算・工事原価の間で一番金額のずれが大きかったのは「木工事」、次いで「外壁工事」だと分かりました。さらに工種毎に見ていくと、「給排水」、「電気工事」など明らかに原価(取り決め単価)の高い項目が浮き彫りになってきました。また、見積り詳細の分析を進めると「プレカット」の取り決め単価が非常に高くなっていることにも気づくことが出来ました。他にも見積りや実行予算に対して工事原価がアップしている項目に「仮設」「塗装」等が出ており、敷調や図面精度の改善、引渡し前の補修の見積り反映等、社内での取り決めが必要な項目が浮かび上がってきました。

正しい手順に基づく原価率改善活動の成果

A社では研修後、さっそく各業者との打ち合わせを実施されました。実行予算と工事原価の乖離が生じる理由、また取り決め単価が市場価格、近隣相場に照らして適正であるかについて協議を進め、現場ごとの人工数についても実際の人工数、1人工当たり単価データをもとに価格設定の見直しを図っていきました。この取組みの結果、材工それぞれの無駄を排除し、実行予算と工事原価の乖離を無くしていくと共に、着工前の実行予算段階の粗利率より最終精算終了後の工事原価ベースの粗利率が低下する状況は改善され、さらに契約時(営業)見積もりの精度を高めていっています。

このように具体的な行動をすぐに起こしたことで、A社の予算精度は高まり、実行予算=工事原価という本来あるべき姿を実現し、契約時(営業)見積もり、実行予算、工事原価の乖離により逸失していた利益を、想定通りに得ることが出来るようになったのです。

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