経営研究会特別補講
2017年秋、北米視察報告

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次にサクラメントの西側約30kmの場所にある環境共生型住宅地開発として有名なデービス・ヴィレッジ・ホームズという住宅地を訪問しました。この住宅地はコモンスペースと約240の住居で構成され、上記サクラメントのまちづくりにも参画したマイケル・コルベットが1980年代に成功させた計画です。コミュニティスペースを中心としたプランニング、住宅間に家庭菜園を配置することによるプライバシーの確保、車道と歩道の完全分離、自然エネルギーの有効活用など、住民の豊かな生活や子育て環境、教育環境を重視した計画です。
当日案内いただいた住民のケリーさんにヒアリングしたところ、20年前に約30万ドルで購入した住宅が今では約80万ドルの評価額になっているそうであり、現在もなかなか売り物件が出ず、コミュニティの熟成が住民の定着を生み、流動性が低いがゆえにさらなる価値向上につながっている好事例といえます。

訪米レポート3 リノベーションによる付加価値向上不動産流通

カリフォルニア州サンフランシスコは全米でも屈指の不動産価格上昇エリアです。その背景には、増え続けるアメリカの人口(2014年3.3億人→2050年4.0憶人予測)とそれにともなうGDPの増加と住宅需要の拡大があります。サンフランシスコ市内で取引されている住宅の中間価格は、リーマンショック後の2011年の約70万ドルを底値として、2016年には約132万ドル(約1.88倍)まで上昇しています。
今回視察したリノベーション物件はサンフランシスコのミッション地区に建つ築約100年の戸建住宅です。2016年4月に売りに出された時の価格が99.9万ドル。この物件を全面リノベーションにより付加価値を向上させてから再販する計画です。アメリカのリノベーションコストは2.5~4万ドル/sqfとのことで、この規模の建物で換算すると約100万円/坪になります。リノベーションコストに関しても面白いデータが整備されており、建築費用(Jobcost)と再販価格(Resale Value)の統計データを取り、リノベーションにコストをかけることで、住宅の資産価値が投下したコスト以上に向上することが一覧化されています。中でも断熱改修や玄関ドアの交換、キッチンのリモデルなどが高い付加価値向上につながっています。
今回のプロジェクトでは、仕入れ価格が99.9万ドル、リノベーションコストが100万ドル、交渉中の売却価格が280万ドルとのことで、粗利ベースで約80万ドルの付加価値向上に寄与しました。デザイン性と性能の向上を伴う正しいリノベーションが住宅を資産として見た時に正当に評価される市場といえるでしょう。

アメリカの不動産流通市場は今もなお活況を呈しています。その背景にはMLSを中心とした不動産データベースの存在、計画的な都市プランニングによる住宅地経営、リノベーションコストの見える化による正しい資産評価など、様々な場面で参考になる情報が得られました。
今後どのようにすればビジネスに活きるのか、継続して検討していきたいと考えています。

(鵜飼)

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