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ここまで、見直し案における断熱性能の評価について掘り下げて見てみましたが、次は今回の見直し案では見落としがちな重要な点についてお話ししたいと思います。それは、断熱性能を発揮するための前提条件となる気密性能です。断熱材をどれだけたくさん使おうとも、気密性が取れていない住宅は現実的には断熱性能の低い不快な住宅でしかありません。計算されたすばらしいQ値もU値も机上の空論になってしまいます。
気密性能の指標は相当隙間面積C値(c㎡ /㎡)として知られていますが、省エネ基準平成11年改正前まではC値の規定がありました。Ⅳ地域で言うとC値5.0以下という異常に低い水準でしたが、改正後の次世代省エネ基準においては、C値そのものが廃止されてしまいました。
EUでは実測C値0.5未満がごく一般的。この0.5という値は住宅の十分な快適性や耐久性が担保されているかどうかを判断する目安といわれています。高性能を謳う多くの住宅会社がQ値は追求するものの、C値には無関心であるのは、エンドユーザーに対しての責任意識が希薄だと言わざるを得ません。
手前味噌にはなりますが、R+houseでは気密性能を高めるために、標準施工レベルを上げる取り組みを積極的に行い、実測C値0.5以下を実現しています。
省エネ基準見直し案が発表されて、住宅づくりに関わる方は少なからず戸惑われたことと想像します。見直し案を受けて、今後どのように舵取りをしていけばよいのかと。本文ではあまり触れませんでしたが、見直し案の2つ目の軸である、設備効率の評価が加わることに対して、「結局、建物の断熱性能ではなくて、高効率の設備を設置すればOKなの?」と思われた方も多いと思います。
確かにお金をかけて高効率なエアコンや給湯器を入れるだけで、数字上の省エネ性能値を上げることは可能です。ただここで注目すべきは、今回のように一次エネルギー消費量で省エネ性能を総合的に評価する際には、躯体の断熱性能・気密性能を高めて、そもそもの暖冷房負荷を下げる必要があるということです。また、高効率設備は建設後でも設置することが可能ですが、後からでは手を入れることができない躯体を、まず優先すべきでしょう。
そして忘れてはならないのは、住宅の快適性に結び付くのは、高効率設備ではなくて、気密性能も備えた真の断熱性能だけであるということです。それを踏まえれば、住宅づくりによってお客様に喜んで頂く仕事をしている我々の進むべき方向は見えてくるのではないでしょうか。(高地)