経営研究会特別補講2016年秋、北米視察報告
~米国の小都市における住宅不動産価値の維持向上とその手法~

(ページ:1/2)

弊社が開催する経営研究会では、日頃なかなか得ることができない新たな知見や、これからの市場において自社を成長に導くヒントを獲得することを目的として、海外の現地を視察する「特別補講」を開催しています。この特別補講は、毎年夏と秋の2回開催され、夏の視察は住宅事業と都市計画について欧州から学び、秋の視察は不動産事業について米国から学ぶ内容となっています。

2016年11月の視察では、経営研究会修了生を中心に全国から14名(弊社関係者とあわせ総勢17名)が参加され、地域資源を活かしたインバウンドの獲得を背景とした不動産需要の創造と都市計画による供給コントロールを同時に活用することで、既存住宅市場の取引活性化と住宅不動産資産価値の維持を実現している実例の見聞を主な目的としていました。日本の地方都市にもつなげて考えやすいよう、特に人口10万人程度のチャールストン、4万人程度のバーリントンという2つの小都市をはじめ、オーランド(NAR大会参加)とニューヨーク(マンハッタンの再開発)という4都市を視察してまいりました。

今回のレポートは誌面の制約もあり、特にチャールストン、バーリントンについてお伝えします。

1. 人口10万人規模の街で、100万ドルの住宅が370万ドルに

チャールストン

チャールストンはアメリカ合衆国の独立よりも前から存在する、南部で最も古い歴史を持つ都市で、17世紀にはニューヨーク、ボストンなどと並ぶ大都市でした。南北戦争の火蓋がきられた場所で、南北戦争終戦後は廃墟となり、結果として大きな投資が起こらず、モータリゼーションの影響を受けない「人が歩けるスケール」の街が歴史建造物の宝庫として維持されています。ただし、街並みの維持は努力の結果でもあります。1931年に、全米の都市で初めて「歴史地区の保全条例」が作成されたことも、歴史的に重要だと思われる建築物と街並みが保全されてきた要因です。さらに1974年の条例改正で、認可を得なくてはいかなる増改築、取り壊し、移転もできなくなり、また建物の高さの最高と最低が明記され、歴史的に重要な建物の敷地内で営業しているレストランなどでは業務内容とは関係のない広告看板が禁止されました。このように厳しいルールの下に街並みが保全されました。こうした取り組みが功を奏し、アメリカ人にとっても人気のある都市として、旅行雑誌の読者アンケートで全米人気都市ランキング1位になったこともあるほど、インバウンドを獲得する魅力の高い都市が出来上がったのです。こうした人気、つまり需要の拡大を受けて保全地区を取り囲む住宅地の需要も上昇し続けています。

写真は視察で訪れた3物件の一つ、ダウンタウン(市街地)に近い立地のハイエンド向けタウンハウスです。1920年代に建てられた一戸建てをリノベーションして3世帯用に改造された住宅です。もともとは一棟で1億円程度の取引価格でしたが、3分割されたうちの1住戸(870sqft(約80㎡))でも1億円となっています。このような値段となる背景には、街自体の人気を背景とした住宅需要の増大を受け、市街地の不動産相場が年率20%で上昇する傾向が数年の間続いてからだそうです。


チャールストンの物件


チャールストンの物件

page: p1 p2

ページトップに戻る